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大阪地方裁判所 昭和43年(ワ)1078号 判決 1968年6月26日

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は、原告の負担とする。

本件について、当裁判所が昭和四三年二月二八日にした強制執行停止決定は、これを取り消す。

前項に限り、仮に執行することができる。

事実

原告は、「被告が訴外渡辺松彦に対する大阪地方裁判所昭和四三年(ヲ)第四八七号事件の昭和四三年二月二一日付不動産引渡命令に基いてした別紙目録記載の建物に対する強制執行は、これを許さない。訴訟費用は、被告の負担とする。」との判決を求め、その請求の原因として、

一、別紙目録記載の建物(以下「本件建物」という。)は、もと、訴外渡辺松彦の所有であつたところ、原告は、昭和三六年六月一一日、同人から、右建物外建物一筆を賃料一ケ月金七、五〇〇円の約定で、賃借して、その引渡を受けた。

二、(イ)ところで、渡辺松彦は、昭和三六年六月一二日、訴外株式会社栄商会に対し、同会社の訴外渡彦株式会社に対する商品取引契約等による債権の担保として、本件建物について、債権極度額金一、三三〇万円の根抵当権を設定し、同月二一日、その根抵当権設定登記を経由した。ところで、栄商会は、渡彦株式会社が右根抵当債務の弁済を怠つたので、右根抵当権を実行するため、本件建物について、大阪地方裁判所に対し、競売の申立(同裁判所昭和三九年(ケ)第二八六号事件)をし、被告は、昭和四二年五月一九日、これを競落し、昭和四三年二月九日、右競落による所有権取得登記を経由した。(ロ)しかして、その後、大阪地方裁判所が昭和四三年二月二一日付でした被告から渡辺松彦に対する本件建物についての請求の趣旨第一項記載の不動産引渡命令に基いて、その執行が開始されたのである。

三、よつて、原告は、右賃借権に基き、被告が本件建物についてした右強制執行の排除を求める

と述べ、

乙号各証の成立は認めると述べた。

被告訴訟代理人は、主文第一、二項同旨の判決を求め、答弁として、

一、原告主張の請求原因事実中、

一のうち、本件建物が、もと、渡辺松彦の所有であつたことは認めるが、その余の点は否認する。

二の(イ)は認める。

二の(ロ)のうち、被告が原告主張の不動産引渡命令を得たことは認めるが、その余の点は否認する。被告は、右引渡命令に基いて、その執行をしていない。

二、本件建物の一階は、渡彦株式会社が占有し、二階は、渡辺松彦が占有しており、他に右建物を占有使用しているものはないのであつて、右事実は、大阪地方裁判所執行官岡本照雄が昭和四〇年四月一六日午前一〇時一〇分、右建物に臨み、取調をした結果からも、明らかである。

なお、大阪地方裁判所昭和三九年(ケ)第二八六号不動産競売事件において、原告は、被告に対する本件建物の競落許可決定について、原告が建物賃借権を有するとして、大阪高等裁判所に対し、即時抗告(同裁判所昭和四二年(ラ)第一四〇号事件)をしたが、昭和四二年七月一二日、抗告却下となり、これに対し、さらに、同裁判所に対し、特別抗告(同裁判所昭和四二年(ラク)第五八号)をしたが、同年一二月一五日、抗告却下となつたものである

と述べた。

立証(省略)

物件目録

大阪市東区徳井町一丁目二三番地

家屋番号  同町一〇五番

一、木造瓦葺二階建居宅

床面積       一階  七二・〇九平方米(二一坪八合一勺)

二階  六三・二七平方米(一九坪一合四勺)

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